Haskell入門

関数型プログラミングとHaskell

関数型プログラミングとHaskell

関数型プログラミングと関数型プログラミング言語で代表的なHaskellについてまとめます。

関数型プログラミングとは

関数型プログラミングとは、プログラミング言語のパラダイムの一つで、数学的な概念に基づく関数を使用してプログラミングを行います。

数学的な意味での「関数」は、以下のような特性を持ちます。

  1. すべての関数は引数を受け取らなければならない。
  2. すべての関数は値を返却しなければならない。
  3. 関数が同じ引数で呼び出されたときは、常に同じ結果を返却しなければならない。

関数型プログラミング言語だけに関わらず、ほとんどのプログラミング言語で関数が登場しますが、引数を受け取らない関数や、値を返却しない関数等も作ることができるため、上記の定義とは大きく違いがあります。これらの制約は、C/C++、Java、Pythonなどで関数を実装してきた人にとっては、非常に厳しい制約であるように感じると思います。

なお、関数型プログラミングに対応した言語でも、これらの制約についてどの程度厳密に制約として採用するのかは言語によって異なります。関数型プログラミング言語であっても、引数がない関数や値を返さない関数も許容されることがあります。

以降では、関数型プログラミング言語の代表的な特徴を見ていきましょう。

関数型プログラミングの特徴

プログラムを関数合成で表現

関数型プログラミングでは、プログラムは複数の小さな関数に分割され、これらの関数を合成して大きなプログラムを構築します。この考え方により、コードは適切にモジュール化され、再利用性と可読性が高いプログラムが実現できます。

ファーストクラス関数

関数型プログラミングでは、関数は「ファーストクラス関数」として扱われます。ファーストクラス関数では、関数は他の変数と同様に扱われます。つまり、関数を引数や戻り値として利用したり、変数に代入して扱うことができます。

参照透過性

関数は同じ入力に対して、常に同じ出力を返却することを「参照透過性」といいます。参照透過性があることは非常に強力です。プログラムの入力にのみ依存して出力が決まるため、プログラムの個々の部分を独立してテストし、最適化することが可能となります。

参照透過性により、コードの振る舞いを正確に予測可能となるため、デバッグやテストが容易になります。

副作用を許可しない

プログラミングにおいて、副作用とは処理が外部の状態や環境に影響を与えるような変更のことを言います。

関数型プログラミング言語では、副作用を許可しないような仕組みが多く取り込まれており、純粋な関数型プログラミング言語では、副作用を持ちません。副作用が排除されることによりプログラムは信頼性が高くなります。

形式手法と定理証明

関数型プログラミング言語に関連する内容として、形式手法定理証明というものがあります。

形式手法は、プログラムやシステムを形式的なモデルや仕様で記述する手法で、設計や検証を行うことで問題やバグを事前に特定できるようにする技術です。特に、鉄道、航空、金融等のシステムの不具合が人命や生活に多大な影響を及ぼす分野のシステム開発で使用されます。

定理証明は、形式手法で作成されたモデルや仕様をもとに証明を行うための技術です。定理証明を使用することで、プログラムが正しいふるまいを持つことをテストを行わずに証明できます。ただし、テストが不要という極端なことを言っているわけではないので注意してください。

関数型プログラミング言語の数学的な性質が、形式手法や定理証明を可能にしています。しかし、一般に形式手法や定理証明は簡単ではなく、十分に実施できる技術者も多くはないと言われています。

Haskellとは

純粋関数型プログラミング言語 Haskell

Haskellは、純粋関数型プログラミング言語です。ここでいう純粋(pure)とは、副作用がなく、参照透過性を持っているような関数のことを指しています。

以降で、Haskellの代表的な特徴について紹介します。

Haskellの特徴

強力な型システムと型推論

Haskellの機能として特に特徴的なものは、非常に強力な型システムです。Haskellでは、静的に型付けされ、コンパイル時に多くのエラーを捉えることでプログラムの信頼性が向上します。

また、型推論をサポートしているため、開発者は型を明示的に指定する必要性が少なくなります。

遅延評価

Haskellでは、遅延評価(lazy evaluation)を採用しています。これは、式の値が必要になるまで計算を行わないことを意味しています。

遅延評価より、プログラムが必要な部分の計算のみを行うためメモリ使用を効率的にしたり、無限のリストの扱いを可能にしたりします。

モナド

Haskellの特徴的な概念としてモナドというものがあります。モナドは、副作用を扱うための概念です。モナドはもともと数学の圏論の中で登場する概念であるため、Haskell特有の概念というわけではないということは注意してください。

ただし、Haskellを理解するにあたってモナドが非常に重要なポイントでありかつ非常に難しい部分でもあります。

Haskellと関数型プログラミング

関数型プログラミングに対応している言語としては数多くの言語が存在していますが、Haskellは、純粋関数型の言語であり、関数型プログラミングを行うための言語としてはとても良い選択肢の一つです。強力な型システムを採用しており、信頼性の高いプログラムの実装が可能となります。

しかし、従来の手続き型やオブジェクト指向型のプログラミング言語とは異なる考え方であるため、Haskellは学習コストが高いプログラミング言語と言われます。

まとめ

関数型プログラミングと関数型プログラミング言語で代表的なHaskellについて概要をまとめました。

Haskellは、関数型プログラミングを実現する言語として非常に優れた言語のひとつです。モナド等の難しい概念についても理解する必要があるため学習コストの高い言語と言われていますが、信頼性の高いプログラムを開発するのに適しています。

是非Haskellを学習して、信頼性の高いプログラムを開発してもらえると良いかと思います。